business3分で読める

フリーランスから法人設立まで - 私の起業体験記

個人事業主から法人化への道のり。手続きの実際、必要だった準備、そして設立後に感じたメリット・デメリットを率直に綴ります。

#起業#法人設立#フリーランス#体験談#freee#税理士

フリーランスから法人設立まで - 私の起業体験記

この記事について: 個人事業主として活動していた私が、法人設立を決意してから実際に会社を立ち上げるまでの実体験をまとめました。これから法人化を検討している方の参考になれば幸いです。

法人化を決意したきっかけ

フリーランス時代の課題

個人事業主として数年間活動する中で、いくつかの課題を感じるようになりました。

売上規模の拡大と消費税の問題

  • 年商が1000万円を超え、消費税の課税事業者になることが確実に
  • 法人化することで消費税の納税義務を一時的に回避できる

信用面での制約

  • 大手企業との取引で法人格を求められるケースが増加
  • 銀行融資や補助金申請での制約
  • 採用活動における信頼性の問題

事業拡大への準備

  • チーム拡大を見据えた組織体制の必要性
  • より大きなプロジェクトへの挑戦意欲
  • 事業承継や投資受け入れの可能性

法人設立の準備フェーズ

1. 事前調査・情報収集(1ヶ月)

freeeの法人設立サポート活用

税理士探しの前に、まずfreeeの法人設立サポートサービスを利用しました。このサービスでは:

  • 法人形態の選択アドバイス
  • 基本事項決定のサポート
  • 必要書類の準備支援
  • 税理士事務所との連携

freeeのセミナー受講

freeeの法人設立セミナーを受講し、以下の内容を学習:

  • 会社設立の基本的な流れ
  • 法人化のメリット・デメリット
  • 税理士費用の相場(30〜60万円程度)
  • freee会計の基本的な使い方

税務面の検討

  • 個人事業税 vs 法人税の比較シミュレーション
  • 消費税の取り扱い変更の影響
  • 社会保険料負担の試算
  • 経費計上範囲の拡大効果

専門家への相談

freeeの税理士コーディネーターサービスを活用して、税理士の紹介を受けました。このサービスでは:

  • 事業内容や予算に応じた税理士の紹介
  • 複数の税理士事務所との面談調整
  • 契約前の相談サポート

2. 法人形態の選択(1週間)

株式会社 vs 合同会社の検討

最初に検討したのは、株式会社にするか合同会社にするかという問題でした。

それぞれのメリット・デメリット

項目株式会社合同会社
設立費用約25万円約10万円
社会的認知度高い低い
決算公告義務ありなし
役員任期ありなし
投資受け入れ容易困難

最終的な判断

当初は「株式会社の方がかっこいい」という理由で株式会社を検討していましたが、以下の理由で合同会社を選択:

  • 直近のメリットを重視: 設立費用が約15万円安い
  • 決算公告義務なし: 年間約6万円の官報掲載費用が不要
  • 事業拡大予定なし: 融資や投資、大規模な事業拡大は当面考えていない

途中変更は非推奨

税理士から「合同会社から株式会社への変更は、法人設立と同程度の手間がかかる。少しでも株式会社を考えているなら最初から株式会社にすべき」とアドバイスを受けました。しかし、目に見える直近のコストメリットを取り、合同会社で決定しました。

3. 会社概要の決定(2週間)

基本事項の決定方針

各項目について、以下の思想で決定しました:

商号

  • シンプルで覚えやすい名称
  • 事業内容が分かりやすい
  • ドメイン名との整合性

事業目的(定款記載内容)

1. コンピューターソフトウェアの企画、開発、販売及び保守 2. システムインテグレーション事業 3. 情報処理サービス業 4. 経営コンサルティング業 5. 前各号に附帯関連する一切の事業
  • 現在の事業内容をカバー
  • 将来の事業拡大に対応できる幅広い内容
  • 許認可が不要な範囲で設定

資本金

  • 当面の運転資金を考慮
  • 消費税の基準額(1000万円)未満
  • 信用力とのバランス

決算期

  • 個人事業時代の確定申告時期(3月)と調整
  • 税理士の繁忙期を避ける
  • 事業の繁閑を考慮

4. 税理士選定プロセス(2週間)

税理士の比較検討

freeeの税理士コーディネーターから紹介された3社に加え、freeeの法人設立サービスを通じて電子定款作成を依頼できる税理士事務所からも見積もりを取得しました。

見積もり結果

  • A事務所(中規模): 約38万円
  • B事務所(小規模特化): 約42万円
  • C事務所(大手): 約52万円
  • D事務所(freee連携): 約40万円

大手事務所は予想通り高額でしたが、サービス内容を比較検討した結果、freee連携に強い中規模事務所を選択しました。

freeeの法人設立サービス活用

最終的に、freeeの法人設立サービスを利用することで:

  • 電子定款の作成を税理士事務所に依頼
  • 設立手続きの進捗確認
  • 完了時の連絡体制

これらがスムーズに進行しました。

設立手続きの実際

定款作成のポイント

事業目的の記載

第○条(目的) 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。 1. コンピューターソフトウェアの企画、開発、販売及び保守 2. システムインテグレーション事業 3. 情報処理サービス業 4. 経営コンサルティング業 5. 前各号に附帯関連する一切の事業

出資に関する事項(合同会社の場合)

  • 出資総額: 100万円
  • 代表社員: 1名
  • 業務執行社員: 代表社員が兼務

登記申請から完了まで

タイムライン Day 1: 法務局に登記申請書類提出 Day 3: 書類不備の連絡(軽微な修正) Day 5: 修正書類再提出 Day 10: 登記完了(履歴事項全部証明書取得可能)

実際にかかった費用(合同会社)

項目金額
定款認証手数料0円(合同会社は不要)
登録免許税60,000円
司法書士報酬80,000円
印鑑作成費15,000円
合計155,000円

※株式会社の場合は約295,000円のため、約14万円の節約効果

設立後の手続き

税務関係(設立から2ヶ月以内)

税務署への届出

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

都道府県・市区町村への届出

  • 法人設立届出書(都道府県)
  • 法人設立届出書(市区町村)

社会保険関係

年金事務所での手続き

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

労働基準監督署・ハローワーク

  • 労働保険保険関係成立届
  • 雇用保険適用事業所設置届

銀行口座開設

必要書類

  • 履歴事項全部証明書
  • 印鑑証明書
  • 定款のコピー
  • 代表者の身分証明書

開設までの期間: 申込みから約1週間

法人化後の変化

メリットを実感した点

1. 信用力の向上

  • 大手企業からの案件獲得が容易に
  • 銀行融資の相談がスムーズ
  • 補助金・助成金の申請機会拡大

2. 税務上のメリット

  • 役員報酬による所得分散効果
  • 経費計上範囲の拡大(出張費、接待費等)
  • 欠損金の繰越控除期間延長

3. 事業運営の柔軟性

  • 従業員雇用の準備完了
  • 事業承継・M&Aの選択肢
  • 投資受け入れの可能性

想定外だった負担

1. 事務負担の増加

  • 法人税申告の複雑さ
  • 社会保険手続きの煩雑さ
  • 議事録作成等のコンプライアンス

2. 固定費の発生

  • 法人住民税均等割(最低7万円/年)
  • 社会保険料の事業主負担
  • 税理士報酬の増加

3. 資金繰りへの影響

  • 役員報酬の固定化
  • 社会保険料の資金繰り圧迫
  • 法人税等の中間納付

これから法人化を検討する方へのアドバイス

法人化のタイミング

検討すべき指標

  • 年商800万円〜1000万円超
  • 継続的な成長見込み
  • 法人格が必要な取引の増加
  • 従業員雇用の予定

準備のポイント

1. freeeのサービス活用

  • freeeのセミナーで基礎知識を習得
  • 税理士コーディネーターサービスで専門家選定
  • 法人設立サービスで手続きを効率化

2. 専門家との連携

  • 税理士は設立前から相談
  • 司法書士は手続きの効率化に必須
  • 社労士は雇用予定がある場合は早めに

3. 資金計画の重要性

  • 設立費用約30万円
  • 運転資金3〜6ヶ月分
  • 社会保険料等の固定費を考慮

4. 事業計画の明確化

  • 法人化後の事業展開
  • 売上・利益目標の設定
  • 組織体制の将来像

今後の展望

法人設立から半年が経過し、当初の目標は概ね達成できています。

現在の成果

  • 大手企業との新規契約2件獲得
  • チーム体制の基盤構築完了
  • 補助金申請による設備投資実現

今後の課題

  • 従業員採用と組織マネジメント
  • 事業多角化への挑戦
  • 持続可能な成長戦略の構築

まとめ

法人設立は確かに手続きが複雑で、維持コストもかかります。しかし、事業の成長段階に応じて適切なタイミングで法人化することで、大きなメリットを享受できることを実感しています。

最も重要なのは、なぜ法人化するのかという目的を明確にすることです。単なる節税目的ではなく、事業拡大や信用力向上といった戦略的な視点で検討することをお勧めします。

これから法人化を検討されている方の参考になれば幸いです。ご質問やご相談があれば、お気軽にお声かけください。


この記事は2025年1月時点の法制度・税制に基づいて記載しています。最新の情報については、専門家にご相談ください。

RK

1997年生まれ

ITエンジニア

インフラ・SRE